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千葉地方裁判所 昭和54年(わ)119号 判決

本籍

千葉市矢作町七番地

住居

右同

司法書士

岡田四郎

昭和五年一二月六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官山崎基宏出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月及び罰金一、一〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、千葉市矢作町七番地に居住し、同市中央四丁目一二番九号に事務所を置いて司法書士業を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て、収入の一部を除外するとともに架空経費を計上する等の方法で所得を秘匿したうえ

第一  昭和五〇年分の実際の総所得金額が四一、〇二〇、八四二円(別紙(一)所得金額総括表参照)であつたにもかかわらず、昭和五一年三月一五日、同市新宿二丁目六番一号所在の所轄千葉税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が八、〇一三、七六八円でこれに対する所得税額が一、一三〇、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により昭和五〇年分の正規の所得税額一八、三四九、九〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額一七、二一九、四〇〇円を免れ

第二  昭和五一年分の実際の総所得金額が三七、三〇〇、八七七円(別紙(二)所得金額総括表参照)であつたにもかかわらず、昭和五二年三月一五日、同市新宿二丁目六番一号所在の所轄千葉東税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一〇、一七八、七九六円でこれに対する所得税額が一、八五六、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により昭和五一年分の正規の所得税額一六、一二五、九〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)と右申告税額との差額一四、二六九、五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示冒頭の事実及び全般にわたり

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の被告人に対する各質問てん末書

一  岡田年子の検察官に対する供述調書

一  収税官吏の岡田年子(二通)、中野富子(二通)及び日色ちづ子(一通)に対する各質問てん末書

一  収税官吏中村正作成の告発書

一  押収してある昭和五〇年分、昭和五一年分の各所得税の確定申告書等一袋(昭和五四年押第七九号の一、二)及び昭和五〇年分、昭和五一年分の各所得税青色申告決算書一袋(同押号の三、四)

各所得金額総括表に掲げる各勘定科目に記載の各種所得別当期増減金額欄記載の数額について

(不動産所得)

一  被告人作成の申述書「不動産収入について」

一  収税官吏中村正作成の不動産所得調査書

(なお、昭和五一年分の過大に減価償却をした右不動産所得調査書添付の「昭和五一年分新築貸家住宅の割増償却に関する計算書」記載の金額六〇八、五八〇円は、収税官吏の被告人に対する昭和五三年五月九日付質問てん末書の問一二の答の部分によると、思いちがいによる計算違いであると認められ、右金額はほ脱不動産所得を構成しないから、別紙(二)所得金額総括表の不動産所得の借方の当期増減金額欄に右金額を計上して、ほ脱所得額算定のもととなる総所得金額を算出した。)

(給与所得)

一  金親康夫作成の申述書「岡田四郎に対する給料の支払について」

一  収税官吏中村正作成の給与所得調査書

(事業所得)

各修正貸借対照表に基づき事業所得を認定する。

各修正貸借対照表に掲げる各勘定科目別の過年度金額欄及び当期増減金額欄記載の数額について

<現金>

一  被告人作成の申述書「各年末の現金有高について」

一  収税官吏中村正作成の現金勘定調査書

<普通預金><定期預金><定期積立預金><郵便貯金(昭和五一年分のみ)>

一  収税官吏千田正美作成の預貯金残高及び受取利息調査書

<有価証券>

一  収税官吏中村正作成の有価証券及び受取配当金調査書

<未収金>

一  収税官吏中村正作成の未収金勘定調査書

<立替金>

一  被告人作成の申述書二通(「立替金の各年末残高について」及び「第二稲毛ハイツ関係の預り金立替金について」)

一  収税官吏中村正作成の立替金勘定調査書

<仮払源泉税>

一  被告人作成の申述書「給料賃金について」

一  収税官吏中村正作成の仮払源泉税調査書

<営業用什器備品>

一  被告人作成の申述書「司法書士業における減価償却資産について」

一  収税官吏谷戸茂作成の営業用什器備品勘定調査書

<貴金属><土地><元入金>

一  検察官山崎基宏作成の捜査報告書

<建物>

一  収税官吏谷戸茂作成の建物勘定調査書

<前受家賃>

一  収税官吏の被告人に対する昭和五三年五月九日付質問てん末書の問八の答の部分

一  収税官吏中村正作成の不動産所得調査書

<未払金>

一  収税官谷戸茂作成の未払金勘定調査書

<預り金>

一  収税官吏中村正作成の預り金勘定調査書

<事業主借>

一  収税官吏中村正作成の事業主借勘定調査書

<事業主貸>

一  収税官吏中村正作成の事業主貸勘定調査書

<不動産所得>

一  被告人作成の申述書「不動産収入について」

一  収税官吏中村正作成の不動産所得調査書

<給与所得><給与所得控除>

一  金親康夫作成の申述書「岡田四郎に対する給料の支払について」

一  収税官吏中村正作成の給与所得調査書

<申告所得>

一  押収してある昭和五〇年分、昭和五一年分の各所得税の確定申告書等一袋(昭和五四年押第七九号の一、二)

税額計算書記載の各年分の各所得控除の実際額欄及び申告額欄記載の数額について

一  収税官吏中村正作成の所得控除額調査書

税額計算書記載の各年分の源泉徴収税額の実際額欄及び申告額欄記載の数額について

一  収税官吏中村正作成の源泉徴収税額調査書

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するが、いずれの罪についても所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし、罰金刑については、いずれもその免れた所得税の額が五〇〇万円をこえるから、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役八月及び罰金一、一〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 松田光正)

別紙1

所得金額総括表

No.1

自 昭和50年1月1日

至 昭和50年12月31日

〈省略〉

修正貸借対照表

No.2

昭和50年12月31日現在

〈省略〉

別紙2

所得金額総括表

No.1

自 昭和51年1月1日

至 昭和51年12月31日

〈省略〉

修正貸借対照表

No.2

昭和51年12月31日現在

〈省略〉

別紙3

税額計算書

〈省略〉

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